事務所だより(2025年12月)
1.12月2日以降の「健康保険証」
昨年12月1日をもって健康保険証の新規発行が廃止され、既報の通り本年12月2日より昨年まで発行されていた健康保険証が使用できなくなります。
ご存知の通り、医療機関を受診される際は原則マイナンバーカード、それが使用できない、使用しない場合は健康保険資格確認書を提示し受診することになります。
健康保険証が使用できなくなるのに先立ち、全国健康保険協会【協会けんぽ】はマイナンバーカードで医療機関を受診できない方を対象に資格確認書を各人の住所宛お送りしました。
従来健康保険証を無くした、資格確認書を無くした際などは社員の方が会社の担当者へ再発行の旨を依頼し会社が健康保険組合へ手続きしていましたが、
今回の一斉発行は協会けんぽの方で対応(職権交付)したようです(社労士としても大量の手続きが来るかと構えていましたが助かりました)。
全国健康保険協会以外の健康保険組合でも資格確認書を職権交付する組合があるようですが電磁的提供(Web交付)を行う組合もあります。
電磁的提供というのは資格確認書をカードや紙ではなくスマートフォンに画像で表示したものを医療機関へ提示するものです。
職権交付のようにプッシュ式に資格確認書が送られてくるわけではないので必要な人は自分でWebで手続きする必要があります。
なお、協会けんぽでは生活習慣病健診が受けられますが、健康診断を行う健診クリニックで資格確認書・資格情報のお知らせに書かれている「記号」・「番号」を聞かれます。
マイナンバーカードには記号・番号が書かれていません。
記号は原則1社で共通ですが、番号は社員の方各々違います。
社員個人で記号・番号を知っている人は少ないでしょうが、会社ではいつ聞かれてもいいように控えておく必要があるでしょう。
2.通勤中の負傷などの災害の補償
労働者災害補償保険(以下、労災保険と書きます)は、労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡などの業務災害に保険給付をおこなわれますが、
通勤による負傷、疾病、障害、死亡の通勤災害に対しても保険給付をおこなわれます。
ただし、通勤災害である認定されるためには、業務災害が業務と傷病などの間に一定の因果関係を問われるのと同じように、労災保険における通勤の要件を満たす必要があります。
労災保険では、「通勤とは、就業に関し、①住所と就業の場所との間の往復、②就業の場所から他の就業の場所への移動、③単身赴任先住居と帰省先住居の間の移動を、
合理的な経路及び方法によりおこなうことをいい、業務の性質を有するものを除くこと」とされています。
「就業に関する」とは、移動が業務と密接な関連を持つことが必要で、遅刻、早出程度の時間の前後は認められますが、午後の出勤なのに朝早くから家を出るという場合には認められません。
「住居」には、台風などのためにやむを得ずに宿泊する場合のホテルも認められます。
「就業の場所」は、業務を開始し、または終了する場所になり、直行、直帰する得意先も「就業の場所」と認めらます。
「合理的な経路及び方法」とは、社会通念上、一般に用いるものと認められる経路及び手段方法の事です。
これまでの要件を満たしていても、移動が「業務の性質を有するもの」である場合には、通勤災害ではなく業務災害として扱われます。
通勤災害は、上記要件の他に経路をそれ、関係のない行為をする「逸脱・中断」の有無が問われます。
帰宅途中に映画館に入る場合などは「逸脱・中断」となり、以降の移動は通勤と見なしません。
ただし、日用品の購入や病院で治療を受けるといった日常生活上必要な行為をやむを得ない事由によりおこなう場合は、「逸脱・中断」後も通勤と認められます。

